Short Shorts Film Festival 2002
2002 年 6 月 14 日〜 19日
東京・原宿「ラフォーレミュージアム原宿」
昨年まで「アメリカン・ショート・ショート」として知られていたこの映画祭は、今年から名前も「ショートショート・フィルムフェスティバル」と改め、新しく誕生。国籍も今までのようにアメリカのみではなく、世界中の作品を集め選りすぐっての上映でした。アメリカ寄りだったこの映画祭も、第4回目にしてはじめて国際色豊かなものとなり、これからがおもしろくなってきそうな気配。

応募作品は、53カ国より計1056本、うち、上映作品は21カ国より54本(パンフレット資料より)
会場は、L.A.、札幌、東京、松本、名古屋、大阪、沖縄と7カ所。

今年の目玉は、俳優であるケネス・ブラナーやイーサン・ホークらが監督した作品の「スター・ショートショート」、また今年開催されたW杯を記念して、サッカーなどのスポーツを題材にした作品の「スポーツ・ショートショート」などがありました。

プログラムは全部で7つ。1プログラムにつき7〜8作品の上映で、わたしはこのうち4プログラムを鑑賞(30作品)。こちらでは特に印象に残った作品のみをピックアップします。
会場のようすは[ねこたま倶楽部]からどうぞ。

[公式HPはこちら] [2001年はこちら]

Program B
A Soccer Story
[22分/ドラマ/ブラジル/監督 Paulo Machline]
全編に語られるナレーションとともに、サッカーの試合を通してブラジルの少年たちが描かれる。その中に“ジーコ”と呼ばれた黒人のこどもがいて、彼は後に伝説の男ペレとなる。ブラジルにおいていかにサッカーが愛されているか、ペレという男がいかに憧れと希望の星であったかを感じさせた。非常に映画的で、編集、語り口もすごく美しい作品だった。


Verrouillage Central
[10分50秒/コメディ/ルクセンブルグ/監督 Genevieve Mersch]
おもしろい!バレンタインデーが誕生日という主人公キャシーが笑える。恋人がいないことに悩んでいる彼女は、あるとき、魔法を使うと「亀」を男に変身させることができることを発見。以来、理想の男が見つかるまで亀を飼い(=買い)続ける。そしてついに部屋中男だらけになる。男ができないのも淋しいが、いすぎるのも大変。男選びもほどほどにね。


19 Peel Street
[4分/アニメーション/カナダ/監督 Stephan Kozak]
思わずミヒャエル・ソーバかと見まちがうほどの幻想的で美しいアニメーション。あひるや豚、牛のかわいい歩き方が印象的。これを見るとこどもの心を取り戻したくなる。


Program C
The Invention of Childhood
[25分/ドキュメンタリー/ブラジル/監督 Liliana Sulzbach]
比較的裕福な環境にいるこどもと、貧乏でお金がないため働かなければならない環境に住むこどもたち、この相反する環境に住む彼らに焦点をあてながら、今のブラジルの現状を描いたドキュメント。こどもというのはいつも、その立場上弱いものであると同時に、こと生きることに関しては無垢ゆえにたくましいなあと感じた。
☆こちらは、ショートショートの実行委員会が今年の全参加作品の中でもっともショートフィルムの魅力を表現した作品に贈る「ショートショートアワード」に選ばれた作品のひとつ。


To Have and To Hold
[13分/ドラマ/イギリス/監督 John Hardwick]
一度しか見たくないが一生忘れないだろう作品。ドライブの途中、事故にあって夫の方は死んでしまう。そして事故にあう前につないだ手が離れなくなってパニックに落ちる妻。生きるために彼女がしたことに誰も反対はできない。思わず目を伏せてしまうシーンがあるが、これはいかにも短編ならではのブラックなエスプリをもった作品。ちょっとグロさを感じる展開にイギリスのユーモア精神を見た。この妻を演じるのが、ミヒャエル・ハネケの映画でもおなじみの女優スザンネ・ローター。すごい。


Peel
[9分/ドラマ/オーストラリア/監督 Jane Campion]
手持ちビデオで撮られたような粗い映像、ドグマ映画のような後味を残す作品だった。そばかすだらけのこどもと父親の顔をどアップに見せるのがすごい。夫婦のけんか、親子のけんか、見ている方も感化されてだんだん気があらくなってくる(笑)


Program E
Offside
[13分/ドラマ/アメリカ/監督 Leanna Creel]
第一次世界大戦下、クリスマスの日に、イギリス軍とドイツ軍が前線でサッカーの一戦を交えたという実話を元につくられた作品。作品としてはよかったのだが個人的にはイマイチ。まさに事実は小説よりも奇なり。この映画よりも、こんなことが本当に起こった現実の方がやっぱりおもしろい、と思わざるを得ない。
☆こちらも、ショートショートの実行委員会が今年の全参加作品の中でもっともショートフィルムの魅力を表現した作品に贈る「ショートショートアワード」に選ばれた作品。

80 Degrees East of Birdland
[6分/ドラマ/ノルウェー/監督 Solvi A. Lindseth]
ノルウェーにツアー中のジャズミュージシャンが道に迷い、一人暮らしの老人に出会う。老人は、生まれてはじめて見るジャズミュージシャンたちを心から歓迎してもてなす。そして最後に、この老人のために野外で演奏するジャズライブのシーンの素晴らしいことったら!ジャズ好きのわたしにはたまらない一作。


Family Christmas
[11分/ドラマ/フランス/監督 Aruna Villiers & Fabienne Berthaud]
マチルド・セニエ出演。そのグロさはジャン・ジュネの映画に通じるところがあった。男一人に女二人、プラス気味悪い老婆が加わって繰り広げるクリスマスの夜の饗宴。彼らは家の住人かと思いきや実は侵入者だったのだ。ラストの惨殺死体を白黒で見せたのは、監督のささやかな思いやりかな。


The Good Thing
[25分/ラブストーリー/アメリカ/監督 Seth Wiley]
なんだかしらないけど、アメリカ郊外の風景がすごく美しかった。そしてなんだかしらないけど、主役のザックのとぼけぶりが可笑しかった。そしてなんだかしらないけど、無意識に動かない仕事を選んでいるザックに共感を得た(笑)。このように淡々と人生が過ぎていったらいいのに・・・


Program G
The Flasher from Grindewald
[3分/コメディ/スイス/監督 Martin Guggisberg]
この作品には得体のしれないおかしさがある。誰もいない雪原にひとり「露出」する男、それを追いかける女。ゲラゲラ笑っているうちに終わってしまった3分間、っていうか、こんな映画をつくろうという発想にまず★5つ、そしてそれを実行してしまった監督と役者に★5つ、計10個の★をあげても余りあるほど。早送りした映像編集も効果抜群。



Straight to One
[21分/ドラマ/アメリカ/監督 Ethan Hawke]
役者のイーサン・ホーク監督の作品。特に期待していたわけじゃないが、役者が監督をするということは今では珍しくないもんね。作品としては特にどうというものではなかった。あくまでも普通っぽく収まっている。ここに出てくる若い新婚夫婦が、なぜかイーサン・ホークとウマ・サーマンに見えてしまった。まあいいや、いつまでも仲良しでいてね♪


Silent Beats
[17分05秒/ドラマ/アメリカ/監督 Jon M. Chu]
題名の通り、サイレント・ビートが耳に残る作品。ビートとはこの場合タップダンス。手足の長い黒人の少年が黙々とタップの練習をする、その背景に描かれるのは、店で買い物ひとつするのにも彼らが受ける人種的差別と偏見。今もアメリカにある根強い人種問題を、格好いいビートと映像で見せる。傑作。


Trip to Venice
[15分/コメディ/ギリシャ=チェコ共和国/監督 Christina Hadjicharalambous]
今回の映画祭で一番おもしろかった作品。プラハに住む中年夫婦、彼らの夢はベニスへの旅。ついに願いが叶って二人は旅立つが、道中ハプニングの連続でなかなか目的地へたどり着けないというコメディ。その語り口の愉快さはゴダールの映画[ウィークエンド]にも通じるところがあった。車で旅をする、ということが日常化しているヨーロッパならではの、人との出会いと珍道中が楽しい。妻役を演じた女性の味わい深い顔もいい。


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