死神博士の栄光と没落 Mr.Death : The rise and fall of A.Leuchter, Jr
[1999年/アメリカ/監督エロール・モリス/撮影監督ロバート・リチャードソン]
1日にコーヒーを30〜40杯飲み、タバコを6箱吸う。専門は、電気椅子・致死量薬物注射器・絞首台・ガス室の技術者。彼の名はフレッド・ロイヒター。父親が刑務所で働いていたため、刑務所職員たちとも馴染みになり、得意の「技術」を生かして早いうちからムショ入りする。
でも彼が貢献したのは“人道的な処刑”であり“尊厳死”である。彼は「生命維持装置と処刑装置とは同じである」と証言する。その根拠は両方とも完全でなければならないから。拷問することなく人の命を止めることに心尽くしたこの男は、後にポーランドにあるアウシュビッツへと極秘で訪れ、ガス室の実体を調べるべく、当時の奥さまと数人の仲間とともに証拠集めをした。採取してきた煉瓦の破片、コンクリートの壁の断片などを科学的に検証を依頼し、それが後の「ロイヒターの証言」となる。この証言は世界中の12カ国語に翻訳され、“ガス室は存在しなかった”という見解を世界中に振りまき話題になった。このことについてはTVニュースや報道などでご記憶にある方も多いだろうと思う。
彼は反ユダヤ人主義と見なされ、世間からは非難囂々、排除された。そして3年間というもの仕事の依頼がなく、文字通り人生が没落していった。

これはかなりの問題作。扱っているテーマも問題だが、なにより一番の問題はフレッド・ロイヒターという人物そのもの。没落していった原因は、その“純粋無垢な性格”なのだが、周りのことも考えず、突っ走っていった孤高の変人ゆえだろう。
また、ドキュメンタリーとは思えないSFチックな演出もかなりおもしろい作品だった。監督エロール・モリス。彼の他の作品もぜひ観てみたい。


あるアナーキスト〜ドゥルティの生涯〜 Buenaventura Durruti, Anarchist
[1999年/スペイン=フランス/監督ジャン=ルイ・コモリ]
内容がよくわからなかった。スペイン革命の際にアナーキスト部隊を指揮し、1936年にその生涯を終えた革命家ドゥルティ・・・まずここからしてちんぷんかんぷんで、要するに時代背景がよくわからない。時代背景がわからなくてもおもしろい作品があったりするのだが、これはそうもいかないらしい。内容が把握できないと全然おもしろくないのだ。で、この映画は、そのドゥルティの人生と最期の場面を、舞台役者たちが監督に指示に従って劇化しているのだが、その行程が映画となっている。簡単にいえば、ひとりの人間の人生を演劇で記録しようというのだ。これは結構珍しいタイプのドキュメンタリーではないかと思うのだが、こういうのもありなんだな。


鳥のように〜ラ・ドゥヴィニエール〜 La Deviniere
[2000年/ベルギー/監督ブノワ・デルヴォー]
監督のブノワ・デルヴォーは、リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ兄弟の『イゴールの約束』や『ロゼッタ』の撮影を担当した人。でも元々はドキュメンタリー作家らしい。

精神療法院ラ・ドゥヴィニエールは、不治の病とみなされ病院から見放された19人のこどもたちを収容している大きな家。そこでは薬や格子などは一切与えず、こどもたちは自由にのびのびと暮らしている。この療法院ができたのは1976年、当時少年少女だった患者は今はすっかり大人になっている。
作品の善し悪しよりも、まずこのような施設が存在していること自体におどろいた。彼らは皆、自給自足のような生活をしており、見た目にも決して楽な暮らしとはいえない。いったいこの施設の運営費はどこから来ているのだろうと心配になったりした。不治の精神病とはいっても、ほぼ正常に話ができる人も何人かいて、このドキュメンタリーはその男性と院長さんとのやりとりなどが中心となっている。その男性、なかなか個性的でときどきジョークなどを言って笑っている(本人は真面目なのかもしれないが)。まるで彼がこの施設を仕切っているような感じだ。でもそんな彼が、最後にテーブルの上にたまごを立てたときにゃあ、あんた、アインシュタインもびっくりするじゃん!


主人の館と奴隷小屋 The Masters and the slaves
[2001年/ブラジル/監督ネルソン・ペレイラ・サントス]
おもしろくなかった。なんだかTVの教育番組を見ているような気分になった。後でパンフレットを見たら、連続TV番組として作られたものだと書いてあって、やっぱりそうかと思った。
教科書を読むよりも、さあ、大先生といっしょに目で見てお勉強しましょう〜!のノリだったが、題材は悪くないだけに残念だ。テーマはブラジル人のルーツを探ろうというもの。この映画の題名にもなっている「主人の館」とは、ブラジルの地に移ってきた大邸宅に住むポルトガル人植民者たちのこと、そして「奴隷小屋」は文字通り原住民の黒人奴隷たちを指す。
作品は4部構成になっており、全部で上映時間228分とかなり長い。でも後半部分はなかなかおもしろく、主人と奴隷たちの性的関係、サディズムについて、黒人たちの食生活を含めた暮らしぶりがいかに植民者たちに影響を与えたか、などが詳しく説明されていて興味深かった。


シックス・イージー・ピーセス 6 easy pieces
[2000年/アメリカ=イタリア=ポルトガル/監督ジョン・ジョスト]
山形国際ドキュメンタリー映画祭2001年最優秀作品。
いやね、こういう作品を最優秀に選んでしまうなんて、ヤマガタの審査員の面々はよっぽど革新的な方々とお見受けする。ストーリーなんてものはこの作品のなかでは意味をなさない。ただ撮るだけ。射撃する女、パフォーマンスの女、水面の波紋、石畳の上を通り過ぎる人たち、建物の壁壁壁・・・本当に、純粋な意味でこれらを「記録」しているのだ。こうなると文句のつけようがない。最優秀賞はあたりまえなのか。美術館あたりで流れていそうな映像の数々。確かに美しいが、わたしは必死で睡魔と戦っていたのだよ。



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