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場 所
東京・有楽町朝日ホール
東京国立美術館フィルムセンター小ホール
シネカノン有楽町
観賞作品
コンペティション 『風を吹かせよう』『終わらない物語』
特別招待作品 『明日が来なくても』『プロミスト・ランド』
特集上映 ボーディ・ガーボル3作品、ガイ・マディン3作品

ねこたま倶楽部に載せた関連コラムはこちら

★4つが最高



コンペティション


風を吹かせよう Let the Wind Blow ★★


先日ねこたま倶楽部に、この映画の撮影はヨーロッパ人のクルーを使っているのではないか?と書いたが、自宅に戻ってパンフレットを見てみると、撮影・美術・録音などにフランス人らしい名前が載っているのを見つけ、やはりそうかと思ってしまった。というのも、この映画は本当に色調がきれいで、今までわたしが観てきた赤青黄色の原色プラス金銀ギラギラのインド映画らしからぬ色合いの映画だったからだ。低層階級の人たちを撮っていてもあまり汚げではなく、そこにはどこか撮る人の視線のあたたかささえ感じる。特にボンベイの夜の街をバイクに乗って疾走するシーンなどは、極めつけの美しさだ。
監督のパルト・セン・グプタはインドのボンベイ生まれであるけれど、96年にパリの国立映画大学FEMISを卒業している。その辺でもヨーロッパの映画の手法というのを学んだ監督のひとりであり、特に色や光の使い方を心得た人のように思う。

映画は、ある意味、今のインドの閉塞的な階級社会のなかで生きる若者たちのジレンマを描いている。階級の差はどうにもならない、がしかしどうにかして自分の運命を切り開きたいという思いがひとつの映画になったと言ってもいいかもしれない。だがそのために、外国に行って出稼ぎをしたり泥棒を働いたりするのを見てしまうと、運命を切り開く手段に、その貧しさから脱出する方法に、わたしたちが今までに何度となく見てきたものと何ら変りないものを見せられると少々辟易してしまう。だが、実際はそうなのだろう。映画としては秀作とは言い難いが、歌って踊るだけのインド映画じゃないものを見せてもらったのでよかった。ラストの急展開に一瞬はっとさせられるが、この切なさもいいのかもしれない。今まで苦労して築いてきたものが、戦争や、世界の動向によって一瞬に崩れてしまうというのは、大陸にある国ならではの一種の危機感かもしれない。いや日本だって、天災によって家や街が壊れてしまうのは経験ずみだ。いったい人間はどのようにしたら、真の意味で運命を切り開くことができるフだろうかということを問うている映画のようにも思える。

■インド=フランス■2003年■監督・脚本パルト・セン・グプタ■撮影ジャン=マルク・フェリエ■美術アニエス・ヴェルニュ■出演アニケート・ヴィシュワラーオ、ニシカント・カマト、タニシュター・チャタルジー




終わらない物語 Story Undone ★★★


どこかでこのような映画を見たことがある。観ている間ずっとそれを思い出そうとしていた。それがダニス・タノヴィッチの『ノーマンズ・ランド』だということに気がついたのは、映画を観終わって家に帰る途中であった。イランから違法に国外脱出する人たちの姿を描いたこの作品は、そのシリアスなテーマにもかかわらず、思わず吹きだしてしまうような「笑い」をところどころに盛りこみながら、国外逃亡の問題を浮き彫りにしていく。機転の利いた展開もおもしろく、イランの映画だから重たいだろう、というわたしの予想を裏切って、意外にも楽しめるものとなった。
監督のハッサン・イェクタパナーは63年のテヘラン生まれ。キアロスタミなどの助監督を務めた後、2000年初監督作品『ジョメー』でカンヌ・カメラドール受賞。この『終わらない物語』は彼の長編第2作目となるらしい。

とあるTV局の男二人(ディレクターとカメラマン)が、国外逃亡する人たちのドキュメンタリーを撮るというところからはじまるこの映画は、国境に向かう者たちにつきまとうメディアの姿がそのまま、映画を観ているわたしたちの視線と重なり、まるで女たちが被っているヴェールをはがすかのごとく、次第に、国外逃亡者たちの素顔を暴いてゆくことになる。バスで国境へと向うその過程でどんどん状況が紆余曲折していき、しまいには本来部外者であるはずのTV局の男たちまでもが危険な目にあう。道案内となる斡旋業者のひとりが言う。お前たちは国外に出てからが本番なのだと。国境を越えたから成功するのではない。つまり彼らは、自分の国を出ようと決意した瞬間から、それぞれが、それぞれの「終わらない物語」の主人公となるのだ。

映画の最後がさみしい終わり方をしてしまったのが少し残念だが、現在進行中であるこの問題にわざわざハッピーエンドをつける必要性もないのであろう。しかし、でもだからこそ、映画のなかで「ひとつの解決法」を提示しても良かったのではと思ったりもする。外国に行くから幸せになるのではない。ユートピアは意外なところに存在しているものなのだ。

■イラン=フランス=シンガポール■2004年■監督・脚本・製作・編集・美術ハッサン・イェクタパナー■撮影レザ・ラクシャン■出演マズダク・タエビ、メフディ・バガニアン、モハメド・アサディ



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