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新・作家主義国際映画祭 2001 年 11 月 18 日〜 26 日 東京・有楽町にて |
邦題五十音順『エデン』『怪盗ブラック★タイガー』『カンダハール』『砂と砂漠のカフェ』『ミレニアム・マンボ』『息子の部屋』『ニルキ・タピオヴァーラ特集』
| エデン EDEN 2001年/イスラエル=フランス=イタリア/特別招待作品/監督アモス・ギタイ/出演サマンサ・モートン、トーマス・ジェーン、ルーク・ホランド他 |
第二次大戦中に、アメリカからパレスチナに移住してきたユダヤ人夫婦の関係が壊れていくさまを描いた作品で、アーサー・ミラーの小説を映画化したもの。奥様役にサマンサ・モートン、そして彼女の父親役には、作家アーサー・ミラー本人が登場、研ぎ澄まされた映像も素晴らしく、これは傑作!・・・といいたいところだが、う〜ん、ちょっと苦しい。難点は、変化のない無用な長回しが多く、撮り方も真面目すぎて退屈、というところか。 ただし主役のサマンサ・モートンはとてもいい。美人というより、どちらかというと大きな目をクリクリさせたお茶目な女の子といった感じの彼女が、貞節な奥様役をしっとり演じる。たとえ彼女が夫を裏切るような行動に走ったところで、実はその原因は夫の方にあるのだ、という気にさせてしまうから不思議。彼女の魅力は瞳の中にあり。 わたしはアモス・ギタイを観たのはこれがはじめてだが、この作品をみるかぎり、彼の力量はすごく感じるものの、かなり観客層を選ぶのではないか、と思う。この作品では個人的につらいものがあったが、一作品だけでは判断したくないので、機会があればぜひ別の作品も観てみたい。 |
| 怪盗ブラック★タイガー TEARS OF THE BLACK TIGER 2000年/タイ/コンペティション作品/監督ウィシット・サーサナティヤン/出演チャッチャイ・ガムスーラン、ステラ・マールギー、スパコン・ギッスワーン他 公式HP |
タイのマサラムーヴィ登場!!!こいつは楽しい!キッチュな色彩、思い切りくさい演技(猫のう○ちと互角の勝負だ)、のどかな音楽をバックにナンプラー西部劇が繰り広げられる。そこに見るのは、シリアスなメッセージでもなくスノッブに満ちた会話でもない、ひたすら理屈抜きに楽しめる。ただそれだけで映画をつくってなにが悪い?・・・ と、そ〜んな監督の意図が充分に感じとれる作品でした。主役の男は濃いいくせに妙にスカしたヤツ、そして恋人役にはタイのモニカ・ベルッチと呼んでもよさそうな女性が出てきてこれまた楽しい。 映画祭になると、必ずといっていいほどこの手の映画が登場する。一般劇場では味わえない、お祭り気分の高揚した雰囲気を、こういう映画たちはさらに盛り上げてくれるので、きっとプログラムを組む人たちも、ある意味狙ってセレクションをしているものと思われる。とはいってもこちらの作品は、ただ単に盛り上げるためにセレクションされた映画ではないようだ。見事佳作に入った(=コンペに選ばれた)作品で、さらに幸か不幸か、一般公開されます。おい、面白すぎだぞ。 |
| カンダハール KANDAHAR 2001年/イラン=フランス/特別招待作品/監督モフセン・マルマフバフ/出演ニルファー・パズイラ、ハッサン・タンタイ、サドリュー・ティモリー他 |
ここにカナダに移住したアフガン女性ジャーナリストがいる。タリバンの本拠地であるアフガニスタンの都市カンダハル。競技場では、罪人たちが正当な裁判が行われないままに処刑されていたというこの都市は、アメリカのテロ報復攻撃によって、日々刻々とその社会情勢が変わっていく。ゲリラでもなければ、男でも行きたがらないその地に、女一人で乗り込もうというのだ。そしてわたしたちも彼女の「移動」を通して、アフガン難民の実体を目のあたりにすることができる。 これはこれは素晴らしい映画。 |
| 少年と砂漠のカフェ DELBARAN 2001年/イラン=日本/コンペティション作品/監督アボルファズル・ジャリリ/出演キャイン・アリザデ、ラハマトラー・エブラヒミ、ホセイン・ハシェミアン他 |
アフガニスタン国境に近いイランのとある村デルバラン。そこに一人の少年がたどり着く。爆撃で母親を亡くし、父親はタリバン兵と闘うため前線にいる。生きるために家族を捨て、故郷を捨てた少年の物語が美しくも淡々と描かれた作品。この映画の中で、なぜか少年はいつも走っている。 なぜそんなに走っているのか? なにを探しているのか? ただ、何の心配もなくゆっくりと眠れる場所が欲しいだけなのかもしれない。 ここに登場してくる人たちがなんとも味わい深い。 一度国境へと連れていかれた少年を取り戻すため、普段は家の窓から外を眺めているだけの老婆が、車に乗り、国境まで行き、国境監視員(?)に向かって、わたしの子を返せ!と食ってかかる姿がうれしい。 大人のために働き続けた、争いと悲しみだけを見てきた少年の目がふと笑うとき、はじめて子供らしく振る舞うその姿に、アフガンの現実を見る。 映画祭会場には監督アボルファズル・ジャリリが挨拶に来てくれました。詳しい映画情報はこちら |
| ミレニアム・マンボ MILLENNIUM MANBO 2001年/台湾=フランス/特別招待作品/監督ホウ・シャオシェン/出演スー・チー、ガオ・ジェ他 |
全編にテクノサウンドが流れる、画面に登場してくるのはドロップアウトした女、ドラッグにおぼれる男、タバコに火をつけ酒をあおる、絶え間ない痴話喧嘩、刹那的な楽しみを求める若者の姿、姿、姿・・・若者を題材にし、このような要素がたくさんあれば、当然騒々しい映画だと思うかもしれない。でもこれはとても静かな印象を残す作品。 客観的に語られるナレーション、その中でしだいにフェイドアウトしていく騒音、バックに流れるテクノサウンドがうるさく感じない、監督の冷ややかな目によって、現代の若者の姿をやさしく描いている。台湾映画とはいえ、なんとなくヨーロッパの雰囲気を醸しだし、なんかとってもいい感じの作品。 主人公の女性が、ふと出会った男に誘われるまま、北海道の夕張まで行く。そこで出会ったおでん屋のおばあちゃん、夕張の映画通りに掲げられた昔の映画の看板、降り積もった雪に、体を、顔を、沈めるシーンが美しい。 ただちょっと観ているときに、長いかな?と思っていたら、上映後のQ&Aで監督が「1時間半でもよかった」といっていたので、やっぱりそうか、と納得。 |
| 息子の部屋 THE SON'S ROOM 2001年/イタリア/クロージング作品/監督ナンニ・モレッティ/出演ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジャスミン・トリンカ他/2001年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品 |
愛する者を失ったとき、人はどう対処するのか、その後の人生はどうなるのか。年を取れば取るほど人間は、死について考える機会が多くなる。僕自身も、そういう自然の流れの中で、死をテーマにした映画をつくることで、死の不安と向き合おうと思ったんだ。(パンフレットに掲載された監督のメッセージより引用)これまた凄くいい映画。息子の死によって、心の裂け目から吹き出しそうになる感情を抱えながらも、決してそれを仰々しく表現しない、実に素晴らしく抑えのきいた感情表現に、観ている側としては平静を保ってはいられない。じんと心の中に深く入り込む作品。イタリア映画の底力ここにあり。奥さん役の、陰影に富んだ横顔がひどくドラマティックで感動。 また、コミカルなシーンもあるので、そのテーマの重さにもかかわらず、決して暗くよどまないところがまたまた素晴らしい。秀作。 |
| ニルキ・タピオヴァーラ特集 NYRKI TAPIOVAARA 上映作品 [ユハ('37)] [盗まれた死('38)] [ある男の運命('40)] 1911年フィンランド生まれの映画監督。1940年 [ある男の運命] を撮影中に、ソビエト・フォンランド間の冬戦争中に死去。28歳になるまえにはもうこの世を去っていた彼の作品を、フィンランドの若い世代が発掘し、今に至る。 |
上映された個々の作品についていえば、例えばドイツのフィッツ・ラングとか、スウェーデンのベルイマンの映画を観たことがあれば、その作風や雰囲気は容易に想像ができるだろうと思う。『ユハ』 アキ・カウルスマキ監督の『白い花びら』と同じ原作を元にしてつくられた作品。仲良く暮らしていたとある村の夫婦のもとへ、ドン・ファン並みの男がやってくる。そんな男にたぶらかされ、一時は家を飛び出した妻。しかし夫ユハは、妻を心底愛し、最後は殉教者のようになる彼の姿に、神話的なものを感じる。 『盗まれた死』 日露戦争中のレジスタンスを描いた作品。光の使い方といい、カメラアングルいい、タピオヴァーラは、この作品の中でありとあらゆる映画手法を実験的に行ったような感がある。北欧的陰影がとても美しい映画。 『ある男の運命』(左上写真) いきなり妻が死ぬ。残された夫は心が満たされぬまま次第に堕ちてゆく。一人で生きることの寂しさ、真実の愛を得ることの難しさ、時代は変わっても根本にあるのはいつも変わらない。堕ちた男ほど醜いものはないのだが、観ていて詩的に感じるのは、これが白黒でつくられているということと、男の描き方が自然であるということに尽きる。 <シンポジウム・プチプチレポート> 今回おもしろかったのは、『ユハ』を上映する前に、ゲストを迎えてシンポジウムが行われた。これがまたすごくおもしろく、日頃じかに聞くことのない映画専門家の話はすごく興味深いものとなった。 タピオヴァーラという監督とその作品のことを知っているのは、世界の映画評論家の中でも非常に少なく、ましてや一般の映画ファンにとってはなおさらのこと。こんな貴重な映像を、この映画祭で観られて本当によかった! などと、わたしは今でもホクホクしている。 シンポジウムにおいて話題になったのは、タピオヴァーラの類い希なる人間性。過激で、強い人格の持ち主であり、作家性が強く、当時は映画評論家としても有名だったらしい。また彼は、その短い生涯の中で5作品を残したが、全てメジャーな作品とは違うものをつくりだし、そのジャンルはひとつひとつ異なり、あらゆるスタイルに挑戦しようとしていた野心家でもあった。 ゲストの一人、フィンランドから来てくれた映画専門家の方が、作品を上映する前に、手持ちのビデオを、特別にちょっとだけ見せてくれました。またまたこれもおいしい・・・う〜ん、ごっっつぁんです! |