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夜よ、こんにちわ ★★★★
■Buongiorno, notte■2003年■監督・脚本マルコ・ベロッキオ■撮影監督パスクァーレ・マーリ■出演ルイジ・ロ・カーショ、マヤ・サンサ、ロベルト・ヘルリツカ■2003年ヴェネツィア国際映画祭脚本賞
「これがベロッキオか!」と思わず唸ってしまうほどすばらしい映画だった。昨年上映された『母の微笑』が個人的にはあまりにもピンとこないものだったので(テーマのせいかも)、今年はあまり期待せずに観賞。それが良かったのかどうかわからないが、わたしはベロッキオの映画スタイルにしびれてしまった。しなやかな緊張感とでも言おうか、往々にしてイタリア映画というのは、とりあえずメガホン取ってカメラを回してみようかといった計画性のない感じで作られている印象があるのだが、ベロッキオは完璧主義なのか? ほかには見ない独特な映像感覚・スタイルというものを持っているように思う。

1978年、極左武装集団「赤の旅団」が、元首相であったキリスト教民主党党首アルモ・モロを誘拐し監禁、その後死刑判決を下し彼らの手で処刑したという歴史的事実をもとに、テロリストの一員である女性キアラ(マヤ・サンサ)を中心に、彼女とその仲間の姿を描いている。もちろんこれはこの事件そのものを語っているわけではないだろう。むしろ、冷血非道なことをしでかした彼らも人の子であったということ。テロリストの一員が、大事なときに恋人に会いに行ったり、隣人の赤ん坊を預かったときの女性のあわてぶりとか、ボスとみられる男(ルイジ・ロ・カーショ)が、緊張のあまり顔中脂汗をかいていたりとか。実際に彼らがしていることとは裏腹に、彼らにも愛する人がいたこと、守りたいものがあること、動揺したときのその姿を描くことでベロッキオは、彼らのなかに人間性を夢見たのかもしれない。そして最後に、キアラの見る鮮明な夢が、見ている方にも爽やかな「希望」として心のなかに残っていく。



心は彼方に ★★★
■Il cuore altrove■2003年■監督・原案・脚本プーピ・アヴァーティ■出演ネーリ・マルコレ、ヴァネッサ・インコントラーダ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、ニーノ・ダンジェロ■2003年カンヌ国際映画祭出品、2003年ダヴィッド・ディ・ドナテッラ賞監督賞
文句なしにいい映画。ある意味イタリア映画のいいところ丸ごと詰め込んだイタリア映画ならではのイタリア映画。音楽もシネマパラダイスしているし、役者も台詞もトスカーナ、女もイタリア男もイタリア。全体的に、熟練した監督がいいとこ取りして作った映画という気がしないでもないが、それでもこのようなイタリア映画は年に一度ぐらい観たいものだ。強いていえば、最初から、最後どうなるかがわかってしまう「驚き」がないのが難点か。ジャンカルロ・ジャンニーニは、『ハンニバル』以来、内臓なくしたまんまどこへ消えたのかと思ったら、こんなところでお爺ちゃんしていたのね。主役のネーリ・マルコレがすごくいい。



子供たち ★★★
■Hinos / Figli■2002年■監督・原案・脚本マルコ・ベキス■出演カルロス・エチェバッリア、フリア・サラーノ、ステファニア・サンドネッリ(2002年ダヴィッド・ディ・ドナテッラ賞助演女優賞)■2001年ヴェネツィア国際映画祭出品
個人的にはひじょうにわかりにくい映画だった。これは1976年から82年まで、アルゼンチンで行なわれた軍事政権による政治犯の拉致・監禁・虐殺の問題をベースにおいた映画で、題名の“子供たち”というのは、この被害者のこどもたちのことである。なに不自由なく暮らしていたある日、自分と同じ血をひく者として突如「兄妹」と名乗る者が現われる。自分の知らないところに兄妹がいるということが何を意味するのか。両親だと思っていた人たちが他人であるかもしれないという疑惑。まるで盲目のように、兄妹ふたりが、お互いの顔や手、背中やからだを探り合うシーンが印象的。これは、相手のからだのなかに自分のものでもあるサインを探しているかのようにも見える。主人公となる青年ハビエルがスカイダイビングをするシーンが節目節目に美しく映える。



カリオストロの帰還 ★★
■Il ritorno di Cagliostro■2003年■監督・原案・脚本ダニエレ・チプリ、フランコ・マレスコ■撮影ダニエレ・チプリ■出演ルイジ・マリア・ブッルアーノ、フランコ・スカルダーティ、ピエトロ・ジョルダーノ
一番期待していったのに悲しくも裏切られてしまった。というより、この映画の世界にどっぷりと浸れなかったわたしのような人間は悲劇だ。1950年にシチリアで作られた映画『カリオストロの帰還』のフィルムが発見されるところからこの映画ははじまる。この発見されたフィルムを巡って、映画製作にたずさわる関係者らのインタビューやら、この映画を作ったとされる兄弟の、当時の様子を再現したものが撮られたり、ドキュメンタリー形式でできている映画なのだが、本当のドキュメンタリーじゃない。ドキュメンタリーらしく仕上げた完璧なるフィクション映画なのだ・・・と、もうここで笑わなきゃいけない。この、人をおちょくったような映画は、ところどころにイタリアらしい笑いが散りばめられているものの、後半部に差しかかってくるあたりでだんだんと作り手のみが陶酔しているような、プライベートな世界になってしまっている。ギリシャ神話に出てくるような格好した男たちが陽気に踊ってみたり、いつの間にかこびとの男が物語の語り部となり、ドラマチックな展開になっていくのだが・・・ ああ映画よ、カリオストロよ、取り残されたわたしはどうすればいいの?



輝ける青春 ★★
■La meglio gioventu■2003年■監督マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ■出演ルイジ・ロ・カーショ、アレッシオ・ボーニ、アドリアーナ・アスティ、マヤ・サンサ、ジャズミン・トリンカ
6時間の超大作。1966年から2003年までのイタリアのとある家族の姿を描いた大河ドラマ的な作品。6時間という長丁場を飽きさせず一気に見せたのはすごいと思うが、全体的に希薄な気もしないでもない。作りがTVドラマ的で「映画」を観に来たわたしとしてはちょっとものたりない。66年から現代にかけて、イタリアで起きた重大な出来事(フィレンツェの大洪水やトリノの学生運動、極左武装集団「赤い旅団」のことなど)を、一家の成長・変化に合わせて、まるで歴史の教科書をめくるように描かれていく。一般市民をも巻き込んだこれらの事件を通じて、当時のイタリアの人たちがどのように生きてきたのかがわかり、わかりやすいといえばわかりやすいのだが、異国人のわたしにとってはまるで「イタリア観光映画」のようにも見える。目にしみるような美しいイタリアの風景を堪能できたのは良いとして、問題は、主役となる兄弟ふたりの、お互いへの思いが見ている方にうまく伝わってこなかったこと。ある意味健全に生きてきた兄ニコラに比べ、自滅型である弟マッテオの方はすべてのものを拒絶してく。親、兄妹、恋人。規律があることで救われていた警官としての彼の職業も、その「規律」というものは実は表面上のものでしかないと気づいたとき、さらに自滅していく。わたしはこのマッテオの存在がある意味この映画の「核」とも思うのだが、彼の複雑かつ繊細な心情をうまく描ききれていないのは残念。監督自身も彼のような人間の心は理解できていないのに違いない。マッテオの存在・心そのものが、生涯理解できないものとして、この映画のなかで普遍的にピュアな部分であるとも言える。



過去の力 ★
■La forza del passato■2002年■監督ピエルジョルジュ・ガイ■原作「過去の力」サンドロ・ヴェロネージ■出演セルジョ・ルビーニ、ブルーノ・ガンツ、サンドラ・チェッカレッリ
ブルーノ・ガンツ、いったいこの人は何カ国語の言葉をしゃべれるのだろうか。わたしの知る限りでは英語・フランス語・ドイツ語、そしてこの映画ではイタリア語である。もしかしてロシア語までいっちゃうのかもしれない。ヨーロッパは確かに地続きをはいえ、言葉までも地続きで、聞いたらすぐしゃべれるものでもないだろう。言葉を繰るのも一種の才能なのだな。残念ながらこの映画は、“父親の旧友”役として出てくるブルーノ・ガンツのみ魅力的な映画であった。主役のセルジョ・ルビーニは、確かフェリーニの『インテルビスタ』にも出ていたと記憶しているが、演技はさほど上達してないと思われる。そして彼の妻役にサンドラ・チェッカレッリ。彼女はとてもステキな女優なのだが、夫婦としての相性はどんなん?と疑いたくなるほど見た目も雰囲気もバランスがひどく悪い。自分の父が実はKGBの工作員であったという「過去の秘密」がこの映画のベースにあるのだが、でもそれがどうした?


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