5月5日(日)
今日は、朝一番と、最終上映作品を鑑賞というとんでもないスケジュールでした

愛の言葉を信じて La parola amore esiste
舞台:ローマ

わたしの大好きなフランス女優ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが主演ということですごく楽しみにしていた。その期待を外すことなくすごくいい映画で、できればもう一度観たい。彼女は神経症の女性の役で、「数」や「色」に、吉や凶の意味を見いだし、外を歩くときもその固定概念から抜けきれない。横断歩道を歩くときは白い横線を踏まないようにして歩いたり、いい数字の日に赤い色のセーターを着ている人に出会ったからといって惹かれてしまったり、自分の部屋のプレートに悪い意味をもつ番号をつけられたりすると、もうそこに住めなくなってしまう。神経過敏ともいえるその繊細に揺れ動く感情を、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキは豊かな目の表情と演技で見せてくれて、本当にこの人は素晴らしい役者だなと思う。

好きな人ができたときに、普通だったら直接言うか、さりげなく誘ってみたりして意思表示をするのだけれど、彼女にはそれができない。気に入った詩(日本の!)を見つけては紙に書き留め、封筒に入れて、秘かに思いを寄せる人のポストに忍びこませる。男がその手紙を読み返事を書くのだが、その返事の伝わり方が、ストレートにではなく、紆余曲折しながらも、ある意味宿命的に、ちゃんと相手に届き、結果お互いに惹かれ合うようになる、という、どことなくフランス映画みたいなところがある作品でもあった。
最後に、あれほど気にかけていた横断歩道の白い横線を、知らずに踏んで歩く主人公の後ろ姿をじっとカメラが撮す・・・この終わり方は素晴らしい。

またちょい役でジェラール・ドパルデューが出てきたのにはびっくりした。
そして、彼女が思いを寄せる男性の部屋の窓から、ローマの遺跡が一望にして見えるのには、ジャリな日本人のわたしには、うらやましさを通り越して驚愕の世界なのであった。[作品資料]



そんなのヘン! Non e guisto !
舞台:ナポリ、カンパニア州

変わった映画だった。カメラの視線が下にある。ときどき大人を見あげるような撮り方をしていて、知らず知らずのうちにわたしたちは主人公の子供の目線の中に入っていく。そしてこれは子供のための映画なのではなく、子供そのものなのだということに気がついた。

母親といっしょに暮らしているヴァレリオが夏休みの間だけ父親の元で過ごすのだけれど、その父親のだらしないことったら(笑)!
子供との約束はすっぽかす、なんでも自分勝手に決めてしまう、夜はいつも出かけてしまって、せっかく遊びに来た子供といっしょにいてやらない・・・でも世の男というのは、一人でいるとこういうものかもしれない。これを見る限りでは、やっぱり子供を理解しているのは(理解しようとしているのは)母親の方かもしれない、と心ならず思ってしまう。

そしてイタリア映画には、必ずといっていいほど食事のシーンがあるのだけれど、この中で家族が食べていたペンネ・アラビアータの美味しそうなことったら!ボルドー色したワインも美味しそうだったし、もう! これを観て無性にパスタが食べたくなった。
またナポリという街がすごく美しく撮られてるので、これを見たらぜったい行きたくなる。それもそのはず、監督のアントニエッタ・デ・リッロは、ナポリ出身の女性監督。彼女の次回作もぜひ観てみたい。[作品資料]




5月6日(月)
というわけで、あっという間のイタリア映画祭、また来年もあるといいな

ラ・カルボナーラ La carbonala
舞台:ローマ、ラツィオ州

「ラ・カルボナーラ」という宿屋の女主人チェチェーリアはローマで一番の美人で、その彼女がつくるカルボナーラは一度食べたら忘れられないほどうまい!ときたら、この映画も美味しくないはずがあるまい。おまけに「カルボナーレ党」という、ふざけた名前の反政府グループまで出てくるし、死んだはずの亭主がいきなり目の前に現われたり、神父は元革命家だったり、枢機卿はお祈りの最中に居眠りするわで、こんなすっとぼけた映画を観ていると、だいぶ前にポルノ女優が国会議員に立候補して見事当選した、という「前代未聞の事実」も確かイタリアだったな、と思い出した。
ところどころに、ではない、もう全てがおかしい映画。映画がはじまったときは、19世紀の衣装を着た人物が仰々しく出てきて、なにやら真面目そうなお話かと思ったら、なんかもうあちこちコケまくりで、結局なんの話かと思ったら、いい年した女が白馬に乗った王子様を待つお話なのでした。傑作&笑作。[作品資料]



薔薇色のトラ Rosatigre
舞台:トリノ、ナポリ

今回の映画祭で一番強烈な印象を残した作品。強烈だったのは主役を演じるフィリッポ・ティーミの魅力によるものが大きいが、その映像美も捨てがたい。この作品が一番最後の鑑賞になったのは全くの偶然だが、これが最後でよかったとつくづく思う。というのも、もしこの後になにか映画を観ることになったらきっと退屈して寝てしまうに違いない。

これはゲイのアントネッロが過ごすクリスマスから新年にかけての数日間を描いているのだが、新年を祝う花火のシーンの映像が幻惑的な美しさで、デレク・ジャーマンの映像美を彷彿させた。ある意味前衛的な雰囲気を持つ作品で、わたしなんかは手放しで「素晴らしい!」と思うのだが、きっとこの手の作品は好き嫌いがあるだろうなと思う。それを証拠に、この映画上映中、退席していく人が結構いた。

一番おかしかったシーンは、女装してヒールの高い靴を履いたアントネッロが、テーブルの上に乗っかり何やら叫び声をあげている。よくよく聞いてみると「チーズを踏んじゃったわ!」・・・そしてヒールで踏まれたチーズのアップ(笑)。さんざん叫んだ後、アントネッロはゆっくり屈みこみ、自分で踏んだチーズの端をつかみ取り口に入れ「なかなかおいしいわよ、これ」・・・

会場で入手したパンフレットには、この映画の監督トニーノ・デ・ベルナルディのインタビューが掲載されているのだが、これがまた興味深い。
彼は60年代、70年代にはアンダーグラウンド的な映画をつくっていて、作品を上映する場所もギャラリーや美術館など。80年代から90年代にかけて物語性のある作品をつくりはじめたらしいが、「よりリアルな内面描写のためには、ストーリー性というのがじゃまになるときがある」とは監督のお言葉・・・いいなあ、こういうアートな映画。渋谷で有名なアート系映画館「渋谷イメージシアター」あたりで上映されないだろうか。確か昨年度の「イタリア映画祭2001」の上映作品『血の記憶』もここでの上映だったはずだが。[作品資料]


[最初にちょっとひとこと] [5月2日/4日] [作品名]

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