アキ・カウリスマキ・ミーツ・ロケンロール(スペシャル・プログラム)★★★
このプログラムの目玉は『トータル・バラライカ・ショー('93)』だろう。ヘルシンキで行われたレニングラード・カウボーイズのコンサートの収録版。彼らのバックをきっちり固め共演するのはレッド・アーミー・アンサンブル。いかつい軍服に身を包み、こわそうな口を大きく開けて合唱する彼らは、旧ソ連の退役軍人で結成された軍団らしい。聞いていると、なんか次第におかしくなってくる。別に彼らは真面目に歌っているだけなのに。またときどき現われる民族衣装を身につけて踊るロシア踊り子たちにはまいりました。巧すぎます。最後はレニングラード・カウボーイズの歌はどこへいったんでしょう的な感じの終わり方に、やっぱりロシアはフィンランドよりでかい!と妙に納得。

これに併せて上映されたのは4本の短編。『ロッキーVI('86)』『ワイヤーと通して('87)』『悲しき天使('91)』『俺らのペンギンブーツ('92)』。これらはレニングラード・カウボーイズの曲に合わせてつくられたプロモーション・ビデオのようにも思える。時間もそれぞれ5分〜8分と短い。『ロッキーVI』では、ボクサーが犬ゾリに引かれて試合に出かけるシーンで笑った。なぜここだけスローモーションがかかる?



マッチ工場の少女 ★★★(1990年)
Tulitikkutehtaan tytto/フィンランド=スェーデン/70分/出演カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ
これ、台詞らしい台詞がほとんどない。サイレントにしてもよさそうな感じだが、たまに出てくる台詞のおもしろいことったら。そして登場人物がなぜか皆サイケな雰囲気が漂っている。姿形は普通なのだが性格がサイケちっくなのだ。マッチ工場でマッチができあがる様子もサイケだし、自分をいたぶった人たちに仕返しするのに「ねずみ殺し」の薬を使うのもサイケ、最後に刑事にあっさりと連れて行かれるイリス(主人公)もサイケ。これはものを言わぬサイケな映画だ。



ラヴィ・ド・ボエム ★★★(1992年)
La vie de boheme/フィンランド=フランス=イタリア=スェーデン/100分/出演マッティ・ペロンパー、イヴリス・ディディ、アンドレ・ウィルムス、カリ・ヴァーナネン
とにかく脇役がゴージャス! まず砂糖会社の社長兼絵画のコレクター役にジャン=ピエール・レオーが登場、そして途中で現われる奇怪なTV局のおやじにサミュエル・フラー、また、レストランの中で出会ったジェントルマン(←クレジットにもこう書いてある)に、あのルイ・マル!ときたからには(確か彼はほかの映画でも同じような役を演じていたよなあ・・・と思わずニヤリ)、映画プラス二重三重の楽しみがある。

50年代から80年代にかけてフランス・パリに集うボヘミアンたち。その大半は、自由への憧れを抱きながらやってくる外国人芸術家たち。彼らの出会いが流れのなかでの出来事なら、その生き方も流れている。ある意味で懐かしさいっぱいの映画である。彼らの職業も、作家・画家・音楽家と、ボヘミアンといえばこれ!みたいな職業。別にわたし、この時代にパリになんぞ行ったことありゃしませんがね。そんな年とってないし。でもきっと日本人の作家連中も彼らのなかにいたんだろうなあと思うと泣けてきます。この時代の、人の意識というものが変わっていくその時に、“新しい風”を満喫できた場所で生きてみたかったと思うときもあります。こんな映画を観てしまうとなおさらです。そしてエルスケン(オランダの写真家)のように小銭とカメラのみを持ってパリに行き、セーヌ左岸で出会った恋なんぞを撮りためてみるのもいい。わたしだったらきっと、売れない小説家といっしょにピクルスなんぞつまみながらカフェで飲んだくれてるかもしれないな。(わたしの職業はなに?)



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