カラマリ・ユニオン ★★(1985年)
Calamari union/フィンランド/80分/出演マッティ・ペロンパー、プンティ・ヴァルトネン、サッケ・ヤルヴェンパー、サカリ・クオスマネン他
映画的にはちょっとしょぼいが、登場してくる男15人が皆フランクという名前だったり、無表情で冗談いってみたり、唐突に人が死んだりで(でもちっとも痛そうでない)、カウリスマキのうりがぎゅっぎゅっと詰まった長編第2作目。彼の風味は全てここからはじまっているという印象。題名のカラマリ・ユニオンとは、どうやら「イカ墨同盟」のことらしい。わたしはまた、何かがからまってほどけなくなった輪かと思ったぜ。(フレンチクルーラーとか)
住みなれた土地に絶望した彼らが目指すのは希望の地エイラ。同盟(ユニオン)組んでるわりには、皆動きがばらばらで、一直線に目的地に行けばいいものをなぜか紆余曲折、ときには足を引っぱりあってみんな自分勝手に行こうとする。わたしは、朝になると、道路端の排水口からぬぅとフランク(どれ?)が出てくるシーンがお気に入り。っていうか、そんなところで寝るなよ。



パラダイスの夕暮れ ★★★★(1986年)
Varjoja paratiisissa/フィンランド/75分/出演マッティ・ペロンパー、カティ・オウティネン、サカリ・クオスマネン、エスコ・ニッカリ
これを観ずしてカウリスマキを語るなかれ。話はよくありがちな恋愛劇なのに、なぜこうもおもしろいのか。キャラの立った人物像もいいけれど、その絶妙な台詞まわしに笑いが渦巻き、最後まで期待を裏切らない。一度笑ったら体はほかほか、今年の冬はカウリスマキにあっためてもらおうかな。
主役のマッティ・ペロンパーカティ・オウティネン(かわいい)は、この作品より、カウリスマキの映画にふたりの内どちらかがほとんど登場するようになる。ゴミ収集の男といつも仕事をクビになる女、ダメなふたりなのに妙に気どってるし。これを見たら、フィンランドの人ってみんなああなんじゃないかと思わせてしまうのがちょっとやばい。でもこれを観たら最後、ほかのコメディでは笑えなくなりそうなのがもっとやばい。



ハムレット・ゴーズ・ビジネス ★★★(1987年)
Hamlet liikemaailmassa/フィンランド/86分/出演ピルッカ=ペッカ・ペテリウス、カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・サルミネン
カウリスマキ版「ハムレット」。
以前ビデオで見たときは、うんともすんともこないちっともおもしろくない映画だと思ったけど、今回改めて観てその原因がわかった。わたしが、ハムレットというお話と登場人物の役割をしっかり把握していなかったのだ。つまりカウリスマキ版「ハムレット」は、いっさいの説明を省いているため、元ネタが頭にはいっていないと退屈きわまりない映画でもあります。
あえていってみると、ひとことも会話せずにいきなりベッドに誘うというマッチョな「ハムレット」で、プロポーズする前に新婚旅行に行こうと誘ってしまう『パラダイスの夕暮れ』で見せた離れ技を、ここでも別の手口でもってみせてくれます。
その証拠に、前ぶれもなく唐突に現われるふたりの友人。彼らはハムレットの両脇をしっかり固め、ハムレットの心の悩み相談にのっていると見せかけておいて実はハムレットの叔父の手先だったりする。でもこの映画のなかでは、彼らはただ登場してくるだけで、ハムレットと会話したあと叔父に告げ口するシーンもないし、もちろん叔父が彼らになにかを頼むというシーンもありません。見ている方は、ただふたりの友人に助言を受けたハムレットが気分転換にロンドンに旅立ったんだなということだけがわかる。でも実はこれは叔父の策略だったのだ。
そしてわたしは、前はこの辺のところが全然わかっていなかったのだ。
オフェーリアが自殺してバスタブに沈むシーンとか、毒殺された母親が倒れるシーンはきれいだし、元ネタと違うラストのどんでん返しもオツな味。もうこうなると、カウリスマキ版「リア王」とか、「ロミオとジュリエット」とかも見てみたい気になる。



真夜中の虹 ★★★(1988年)
Ariel/フィンランド/73分/出演トゥロ・パヤラ、マッティ・ペロンパー、スサンナ・ハーヴィスト
とことん不運な男の話。この写真を見てもわかるとおり、彼には家もお金もありません。いえ、あったんだけど取られてしまいました。そしてこの寒い雪のなか、オープンカーの幌も出さずに(出せずに)、こんな格好で幸せを求めてさまよっています。どことなくジム・ジャームッシュに似ている彼は元炭坑夫でした。閉山になって職を失い、土地をはなれ、仕事を探しに旅に出るのですが、道中次々と襲いかかる不運の嵐。結局最後は刑務所へ。

この映画、彼の風貌がジム・ジャームッシュに似ているせいか、刑務所から脱獄するあたりは『ダウン・バイ・ロウ』を思い出してしまいました。いえ、ジャームッシュは監督なのでこの映画には出てきませんがね。なんだかそんな気がしたのですよ。そういえば、彼が刑務所に入れられた理由もしょうもない誤解からでした。自分の金を奪い盗ったチンピラとばったり出会い、金を取り戻そうと殴り合ってるときに、逆に警察に捕まってしまうのは彼の方だったのです。災難とは何度もふりかかってくるもの。でもそんな彼でもついてくる女ぐらいできます。これがこの映画の不思議なところ。というかカウリスマキって不思議。
全体的にしめった内容の映画だけど、カウリスマキは決してユーモアを忘れない。特に、元炭坑夫がム所で知り合った男と銀行強盗をやるシーンは、なんか、落としてしまうし、するっと緊張が解け、ずるっと椅子からずり落ちそう。
最後に映し出されるフィンランドの夜の港が、しみじみ美しい。



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